午後九時のハミングを聴きながら

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 浴室の上部にある小窓を少し開けると、たむろしていた湯気がすんすんと抜けていった。霧が晴れるように視界がよくなった。  かけ湯をし、湯船にとっぷり肩まで浸かると、ふぃーと大きくを息を吐く。一日の疲労と一緒に。  バスタブのふちにひじをかけ、背中をバスタブに預ける。そろそろだろうか。目を閉じ、どんな音も逃すまいと神経を集中させる。  やがてご機嫌なメロディが窓の外から流れこんできた。  午後九時をまわったころになると、決まって鼻歌がどこからか聞こえてくる。このことに気づいて以来、自分はすっかりこの鼻歌の主のファンになってしまったのだ。
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