春色の新生活

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春色の新生活

「あ、そうだ。あさくら~」 金谷くんが私の名前を呼んだ時、放課後の緩い空気を漂わせていた教室がピリッとした。 理由はわかってる。 春休みの間に両親の離婚で私の名字は岡安から朝倉に変わったのだ。 昨日始業式前に教室で担任がサラッと説明した後から、私に対してクラスメイトは腫れ物に触れるような扱いになっていた。 「前に言ってた漫画……」 持って来たんだけどさーと言いながらカバンから漫画を出すことなく教室を出て行ってしまった。 この空気の教室に戻る勇気が無かった私は慌ててカバンを掴んだ。 「ちょっと金谷くん、呼んどいて出ていかないでよ」 本当は出てこられてホッとしていたけど、そんな気持ちを隠すように、怒ったように言ってみる。 「あ、ワリぃ。そのつもりは無かったんだけど何か変な空気が気持ち悪くて出てきちまった」 「別にいいけどね。私も帰るとこだったから」 これ、と言って3学期の終わりに貸してくれる約束をしていた漫画を手渡される。 「朝倉って呼んだのまずかった?」 口が悪くてマイペースな金谷くんでも、あの空気は感じたんだと思ったことは言わずに首を横に振った。     
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