プロローグ factor factorは思案する

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何があったって無敵! なんて見栄を切ったけど、万が一犯罪に巻き込まれてしまっているんだったら、カムバックまで相当時間が掛かってしまう。 今のバンドシーンはお客さんが飛びつくのも早ければ、飽きられるのも驚くほど早い。次から次へと新しい才能を持ったバンドがどんどん出てきて、生き残る為には一瞬だって立ち止まれないのは、俺にだって分かってる。 ああ、何が起こっているのか早く龍埜さんの口から聞きたい。でも、もしかしたら取り返しのつかないことになってしまうかもしれないから、ずっと終わって欲しくない気持ちもある。 気が付けば、最後の曲も近くなっている。事前に決めていた段取りではアンコールは無し、ラスト一曲は龍埜さんが初めて作った曲だという『blue』 「ああ、楽しいなあ……! 終わりたくないけどこれが最後の曲だよ! みんな心して聴いてくれ! 『blue』」 印象的なギターのリフレインから、ベース、ドラムが入って、気だるげに歌が入り、曲が進行していく。 この曲が終わったら、俺たちはどうなるんだろう。ねえ、絶対に大丈夫だよね? factor factorは、こんなところで終わるバンドじゃないよね? 最後のサビが終わり、アウトロへ。だんだんとテンポがゆっくりになっていって、メンバー同士が、泣き笑いのような感極まった表情で最後の一音を合わせる。     
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