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ああ、まだ終わって欲しくない。全然心の準備ができてない。急遽一曲増やしても文句なんて誰にも言わせないから、もうちょっと演奏してくれ。
そんなおれの願いは誰にも届かないまま
曲が、終わる。
「ありがとうございました! factor factorでした! また、どこかで……!」
慧(サトシ)
きっと今は、青春の真っ只中にいる。
でも、自分がどうしてステージに立っているのか、何を伝えたいのか。ある程度人気が出てきた今でも、少しだけ考えこんでしまうことがある。
元々音楽を聴くのが好きな家庭に生まれ育った。というせいか、いつしかボーカルギターになって、たくさんの人たちを感動させたい! なんて青臭いことを思っている時期もあった。
だが、ギターを始めて少ししてから、技術は身に付いたとしても、俺には作曲的センスが皆無だと思い知らされた。何を作っても、どこかで聴いたことがあるようなものになってしまう。
バンドで成功するのは無理かなあ。と落ち込んだりもしたけど、よくよく考えてみれば今売れているバンドたちだって、飛び抜けて才能がある人間が一人いれば、それなりに人気になっている。
そう思い始めてからは、とにかく優秀な人間を探すべくメンバー募集をしてみたり、募集している人がいれば会いに行ったりと、涙ぐましい努力を重ねていったものだ。
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