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ただ、やっぱり凄いやつっていうのは滅多にいるものではなくて、音楽は趣味で続けた方が賢い選択なのかもなあ……と、半ば諦めていた時、ようやく心から着いて行きたいと思えるボーカルに会えたんだ。
※
龍埜と出会ったのは、何人もの人間に会っては失望していた秋のことで、当時の俺は「こいつもどうせ大したことはないんだろ」なんて完全に見くびっていた。
けど、作ってきた曲があるんだ。って言われて聴かされた曲は、俺みたいな凡才が幾ら努力を重ねたとしても、永久に作れないような心を打つ曲だった。
今ここでこいつを逃してしまったら、一生普通に生きて行くことしかできない。と思った俺は必死でギタリストとしてスキルがあることをアピールして、なんとかバンド結成まで漕ぎ着けたってわけだ。
しばらくの間は、ベースボーカルの龍埜と俺の二人だけでひたすら曲を作るしかなかったが、ちょっとでも技術的に足りないところがあると、かなり激しく怒られたから死ぬ気で練習を重ねていった。
これは名曲だらけだぞ! なんて二人で盛り上がって満足していたのも少しの間だけで、やっぱり評価されたい。誰かに聴いて欲しい。という想いはどんどん強くなってくる。
まあ、何かをクリエイトする人間っていうのは承認欲求が特に強いっていう話だし、そこからはひたすらドラムを探して奔走する日々になった。
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