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別の形で出会っていたなら、あるいは出会う順が先だったならば。クオーレとリトルシェイラの運命は重なっていたかもしれない。
かつて敵として出会った娘、リトルシェイラ。
荒廃した日々の中で、激しくその娘を求めたものの……彼女はユリウス公爵の花嫁候補として、すでに彼に身も心も捧げた後だった──。
「それでも……リト。俺はお前を愛する事をやめられなかった……」
サイドテーブルには愛用のプラチナの眼鏡。
これを外す時は、彼が執事からクオーレ本人に戻る時。
「うん……知ってる。だからあたしがずっと笑っていられるように……クオは命を投げ出してくれたんだよね」
「昔の話だ……」
月明かりだけのベッド、クオーレの腕の中でリトルシェイラが照れたように微笑む。
その風情が息も止まるほど愛しくて、けれど乱暴に触れたら壊れて消えてしまいそうで……彼はリトの額にそっと口づけた。
……よかった、消えない。
「でもそのせいで、俺は公爵に見込まれて光の者に任命だ。しかもこの公爵家に住まわされて、お前たち公爵夫妻の執事。皮肉にもほどがある」
「だって光の者はいつもユーリと……えと、公爵の傍にいないと”いざ”って時に守れないでしょ? 皮肉なんかじゃないと思うよ……」
そう、光の者は傍近くで公爵の身も心も支えて護衛しなければならない。
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