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丸めたフタの上に、体を洗う際に使ったタオルを置いていた。それを広げて手に取り、湯船の上にふんわりと落とす。空気抵抗で真ん中が盛り上がったのをまとめて湯船の中に入れた。ぶくぶくと泡が出るこれはタオルくらげというらしい。
こんなこと、家の風呂でしかできないなとにんまりする。そう、こんなちょっとしたことができるのがとても嬉しい。
知らず知らず緊張していたのか、強張っていた体がほぐれていくようだ。
「……やっぱ日本人だなぁ……」
海外に出るまで日本のよさや便利さがわからないでいた俺は本当にバカだった。
これからもシャワーで済ます日はあるかもしれないが、もし浴槽に湯が張ってあったならできるだけ風呂につかろうと思う。
「母さーん! 俺、肉じゃが食いたい!」
「あいよー!」
風呂場から台所に向かって叫ぶ。
当たり前は当たり前じゃないと気づけた俺は、少しは成長できただろうか。
おしまい。
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