25人が本棚に入れています
本棚に追加
「今夜は母さんの家に泊まらせてもらうから」
電話を終えたようで母がカーテンを開けて中に入る。
「別になんでも無いんだからもう帰って良いわよ」
「そう言うわけにいかないでしょうっ」
ピシャリと投げ捨てるように母が言う。
「こんな時にしか来ないくせに……」
私にしか聞こえない声で祖母が呟いた。
その言い方だと、まるでもっと来て欲しいみたいに聞こえる。
「えっ?おばあちゃんは……」
言い掛けた言葉を祖母が遮る。
「じゃあ、いつ帰るんだい?」
「やあね。そんな今来たばかりなのに、早く帰って欲しいみたいに言って」
買い言葉のように母の怒りが滲み出る。
「こっちにも色々と都合ってもんがあるからね」
先程までの可愛かったおばあちゃんが、鋭く母を睨むように尖った視線を投げた。
最初のコメントを投稿しよう!