八重桜

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「すぐには帰れないわ。母さんが退院してからも大丈夫か見てから帰るわよ」 それに母も応じるようにきつい物言いにエスカレートして行く。 「和佳奈の学校はどうするんだい」 「明日から連休よ。学校だって休みだわ」 投げ捨ては様にピシャッと言葉を投げる。 「ね、おばあちゃん起きてるならカーテン開けて良い?さっき窓から桜が見えたよ」 トゲトゲした空気に居たたまれずに私は言葉を挟んだ。 「ああ、八重桜だね。でも、うちの八重桜の方が綺麗だわ」 「……そうね」 そう答えたのは母だった。 私もそうだねと答えてベッドを仕切るカーテンを開けた。
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