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二人共、外面は良いのがそっくりだ。
だから仕切りのカーテンが少しでも開いていたら、周りの目を気にしてケンカにもならないだろうと思った。
「……何か必要なものがあったら買ってくるけどいる?」
居心地悪いのだろう。
一見親切な様に見えて、実は早くその場を逃げ出したくて言った様に聞こえる。
「岡女堂の桜餅が食べたいね。病院出たらすぐにあっただろ」
「また、そんな甘いものばかり食べてたら……」
言い掛けて母は言葉を噤む。
やはり同室の人の目が気になるのだろう。
「分かったわ。他には?」
それに黙って首を横に振りながら祖母は目を瞑った。
母が病室から出て行くその後を私も付いて行こうとしたけれど母に「あんたはここにいて頂戴」と止められた。
私は居心地悪くベッド脇にあったパイプイスに浅く腰掛けた。
「和佳奈。お母さんは、まだ桜餅が好きかい?」
「え?桜餅……?」
母が桜餅をそれほど好きな感覚は無かった。
どちらかと言えばチョコレートやケーキなどの洋菓子の方が好きなはず……。
さあ、と私は首を傾げた。
「何だい、あんたは自分のお母さんの好物も知らないのかい」
そう言って再び目を開けてじろりと睨んだ祖母。
そう言われても、と返答に困っていた所に助け船の叔父さん登場。
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