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「そりゃあね、親子だもの。仲良くしたいさ。でも、今更……なんて言葉を掛けて良いのか」
困った顔の祖母に私まで困った顔になる。
「ね、どうしてケンカが始まったの?」
祖母を諭すようにゆったりと聞く。
それに答えるように祖母は大きくため息を吐いた。
「大した事じゃ無いんだよ。ちょっとあの頃はあんたの母さんの再婚が急に決まってお互いギクシャクし始めていたんだ」
「……それで?」
「大事な一人娘の最初の結婚が失敗して、あの子だって随分と傷付いた。それなのに今度は二十も年上のおじさんと結婚だなんて……。麻里子よりも私の方に年が近いくらいだ。結婚の話を聞いてからも、やめときなって毎晩のように説得して」
正確には二十じゃなくて十七だけどね、と心の中で突っ込む。
言葉が止まった祖母に「それで?」とまた促す。
「そんな時に、言われたんだよ。私の作った桜餅よりも岡女堂の方が美味しいって」
その次の言葉を待ってしばしの沈黙。
「え?もしかして、それで?たったそれだけの事で?」
あんなに拗れていた原因は桜餅!?と半ば呆れた。
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