八重桜

でも……ちょっと待って。

あ、そうか。
何だ、この親子。
素直じゃないところも、そっくり。
つい笑いがこみ上げる。
二人とも互いの大好きな食べ物をちゃんと分かってるんじゃない。
それだけで十分。
相手の事が大好き過ぎて、拗らせただけにしか見えない。
本当は、自分の大切なものを認めて欲しかっただけでしょう？
おばあちゃんは桜餅を。
お母さんは自分の選んだ人を。
仕方がない、あとのもう一押しは私がしてあげようと思いながら私も桜餅を一口食べる。
全く世話の焼ける大人達。

「ね？そろそろ仲直りしたら？」
「えっ」
二人が同時に私へと視線を投げてくる。
「別に、ケンカなんて……」
「そうさ、ケンカなんか……」
二人が急にぎこちない。