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やれやれ、と思いながら外に目を移す。
病室の窓から見える八重桜が目に留まり、途端にスッと記憶が蘇る。
八重桜の木の下で三人座って桜を愛でながら桜餅を頬張る。
祖母から手渡された湯飲みの中にも咲いていた八重桜に私は感嘆の声を上げていた。
『お母さん見て!湯飲みの中にも桜のお花が咲いてるよ。すごく綺麗だね』
『そうね、すごく綺麗』
「分かった。思い出したっ」
二人がキョトンとした顔でこちらを同時に見た。
「どうしたの?急に……」
母の戸惑いをよそに私は少し興奮していた。
「今思い出した!桜の木の下で、私昔飲んだ!桜湯、私飲んだんだった!桜餅と一緒に!!」
「ああ、そうだったねぇ。あの時も確かに桜餅があったわね」
「桜湯?」
母が怪訝な表情で尋ねる。
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