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「おばあちゃん、私もお母さんも心配したんだよ?」
諭す様にゆっくりと祖母に問い掛けた。
「……桜の花を摘んでいたのよ」
幼子が叱られたように小さくなって祖母が答える。
「桜の花を摘むって、どうしてそんな事。しかもそんな朝早くに」
私と祖母の間を割って入り、問い詰めるようにキツイ口調の母。
もっと優しく聞いてあげたら良いのに、と私はまた小さく溜め息を吐いた。
「それは……」
途端に母のスマートフォンが鳴り、言い掛けた祖母をそのまま無視して母は慌ててカーテンの外に出て病室からも出て行ってしまった。
残された私は少し居心地が悪い。
何せ祖母とこうして二人きりになるのは随分と久しぶりの事だったから、何を話していいのかと落ち着かない。
「和佳奈は大きくなったわね。今日は学校休んだのかい?」
漸く瞼を開けてこちらを見る祖母に、年を取ったなと思った。
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