八重桜

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「うん、まあね」 「学校は楽しいかい?」 「勉強は嫌だけど、まあ、楽しいよ」 少しだけおどけて言うと祖母が小さくと笑う。 「あんたのそういう言い方、本当にお母さんそっくりね」 「え?そう?」 祖母は昔からよく、母と私はそっくりだと言っていた。 「そんなに似てるかな?」 「あんたの幼い頃のあの頑固なところなんて特に、本当にそっくりだったわよ」 そう言って口元を緩めながらまた目を瞑る。 「ね、どうして桜の花なんて摘んでたの?」 瞑っていた目を僅かに開けて、ちらりとこちらを向いた。 「……塩漬けにしたかったのよ」 その言い方が子どもが拗ねたような物言いで少しだけ可愛いと思ってしまう。 「塩漬け?桜の花を?」 「そうよ」 「桜の花、塩漬けにするの?食べられるの?」 「……何だい。覚えていないのかい?昔あんたがまだ小学校入ったばかりの頃に、頂いた桜の塩漬けにお湯入れて、桜湯にしてみんなで飲んだじゃないか。そうしたらあんたとあんたのお母さんとで湯飲みの中に花が咲いてるってとても喜んで」 祖母が問いかけるように視線を送る。 私は分からずに首を少しだけ傾げた。 今、私は高校生。 そんな昔の事なんて覚えていなかった。
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