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サキ先輩との再会
大学を出て自宅に向かう。僕を呼ぶ声。
誰だか分かったけど知らん顔してた。
七瀬先輩でないんなら、誰とも会いたくない。話したくもない。
でも靴音が迫ってきて、肩を叩かれた。
「日下君。呼んでるでしょ」
七瀬先輩の親友の高木サキ先輩だった。
「何度も手紙出したでしょう。
訪ねても来ない。
いつのまにか携帯の番号も変えてた。
この間は、私の顔見たら、走って逃げ出した。
ひどいよ!
私も日下君も、七瀬と行くはずだった大学に進んだんだから、七瀬の分も一緒に頑張ろうって、手紙に書いたでしょう。
読んでくれた!」
サキ先輩は僕の手を引っ張ると、近くの喫茶店に入った。
『文豪』という名前で、壁いっぱいの本棚には小説の文庫本があった。一時間半まで読み放題だった。
ウェートレスがサキ先輩に会釈した。
僕らは向かい合って座った。
サキ先輩は、ぼくの好みをまだ覚えていた。
「コーヒーとウィンナーコーヒー」
それから僕の方を見る。
「携帯の新しい番号教えて」
答えない。下を向いた。
「日下君。いい」
サキ先輩が僕の顔をのぞきこむ。仕方なく、サキ先輩の差し出したメモに、携帯の番号をメモする。
「私の番号知ってるよね」
何も言わずに下を向く。自分の番号を書いて渡した。
「すぐ登録して!」
サキ先輩が見守る中、番号を登録。すぐメモ捨てるんじゃないかと心配してたみたい。(実際、そう思ってた・・・)
「日下君」
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