サキ先輩との再会

4/5
前へ
/121ページ
次へ
と言われたこともあります。  『よく来た』 なんて、言われる訳ないんです。  先輩の霊は、僕が来るのを待ってなんかいませんでした。  待ってたのは、僕のお金を狙った霊能者たちだったんです」  サキ先輩を見ると、手を口に当てて必死で笑いをこらえていた。  サキ先輩って、とってもいい先輩だ。よく分ってる。  当然だ。七瀬先輩が今もいるなら、僕と七瀬先輩の笑い話でしかないんだもの・・・  でも笑い話の主人公はもういないんだ。  ここまで話した時、僕、もう我慢ができなくなった。両手で顔を覆った。涙が洪水のように噴き出した。指の間からどんどん流れ落ちていく。  サキ先輩はもう笑いをこらえてなんかいなかった。真剣な表情で僕に呼びかけた。  「日下君」  涙がテーブルの上。コップの水がこぼれたように流れていく。  七瀬先輩との思い出が次から次へと思い出される。僕はどんどんとつらくなっていく。  「『私、もう行くから!』 と言ってくれるだけでいい。  『君のようなだめな弟子は明日からもう会わない』 と意地悪されたっていい。  『バーカ』 って頭を叩いてくれてもいい。  もう一度だけ、もう一度だけ会って話がしたいんです。     
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加