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と言われたこともあります。
『よく来た』
なんて、言われる訳ないんです。
先輩の霊は、僕が来るのを待ってなんかいませんでした。
待ってたのは、僕のお金を狙った霊能者たちだったんです」
サキ先輩を見ると、手を口に当てて必死で笑いをこらえていた。
サキ先輩って、とってもいい先輩だ。よく分ってる。
当然だ。七瀬先輩が今もいるなら、僕と七瀬先輩の笑い話でしかないんだもの・・・
でも笑い話の主人公はもういないんだ。
ここまで話した時、僕、もう我慢ができなくなった。両手で顔を覆った。涙が洪水のように噴き出した。指の間からどんどん流れ落ちていく。
サキ先輩はもう笑いをこらえてなんかいなかった。真剣な表情で僕に呼びかけた。
「日下君」
涙がテーブルの上。コップの水がこぼれたように流れていく。
七瀬先輩との思い出が次から次へと思い出される。僕はどんどんとつらくなっていく。
「『私、もう行くから!』
と言ってくれるだけでいい。
『君のようなだめな弟子は明日からもう会わない』
と意地悪されたっていい。
『バーカ』
って頭を叩いてくれてもいい。
もう一度だけ、もう一度だけ会って話がしたいんです。
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