サキ先輩のアドバイスなんか聞きたくない!

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サキ先輩のアドバイスなんか聞きたくない!

 先輩もう約束なんかできない。  たったもう一度だけでもできない。  僕はもう何もできない。  出会いがあれば別れがある。  でも、さよならも言えない別れほど、残された人間にとって辛いことなんてない。  別れの挨拶、これまでのことへの感謝、最後の約束もできないまま放り出されるって、何て残酷なんだろう。  一年半・・・一年半だった・・・  ずっと僕は、残酷な現実に向かい合って来た。  壁に七瀬先輩の写真や新聞記事を貼った。  七瀬先輩ともう一度、話ができるきっかけにならないか。  そう真剣に考えたからだった。  そうだ!ずっとおかしいままだ。  そんなもん見てれば・・・  一晩中・・・  泣き続けるしかない・・・  分り切ってるんだ・・・  いくら泣いたって七瀬先輩の声なんて聞こえな・・・  みんなよく分ってるはずなのに・・・  「日下君」  サキ先輩はいつだって優しい。  「何も分ってない。  そう言っても否定なんかしない。君にとって人生で一番大切な人だったんだから・・・  でもね。七瀬は、私のクラスメイトで、小学校からの親友だった。  私は君の先輩だし、君はどう思ってるか分らないけど、私、君のこと、友だちだって思ってる。  だから君に、アドバイスくらいできると思う」  よく分かってた。サキ先輩のあたたかい気持ち・・・  僕に電子辞書をくれた。  七瀬先輩に、  「日下君は才能があるんだから」 と言ってくれた。  でもサキ先輩・・・  七瀬先輩なんかじゃない・・・  サキ先輩の話なんて、受け入れられなかった・・・  「いやです。聞きたくありません」  失礼だって分かってた。  だけど・・・  僕・・・  サキ先輩の話を聞くことできない・・・  心が受け入れられない・・・  それが分かってるから・・・  僕のこと、心から心配しているサキ先輩のこと・・・  裏切るなんてできなかった・・・  「自分でも分ってるんです。  自分のこと。そして先輩が僕に何を言おうとしてるのかだって!  サキ先輩の目を見ればすぐに分るんです
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