七瀬先輩のお母さん

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七瀬先輩のお母さん

 携帯から七瀬先輩のお母さんの声が聞こえる。  七瀬先輩のお父さんの葬儀に参列した時のお礼をまず言われた。  お父さんは七瀬先輩が亡くなった一年後、癌で亡くなった。  その頃、僕、七瀬先輩か亡くなったショックから立ち直れないままだった。  学校に行くのもイヤで、進学の準備にも全く身が入らなかった。  学校以外、外に出たくもなかった。  おおげさだけど、最後の力を振り絞る思いで葬儀会場に行った。  七瀬先輩のお母さんは、ご主人を亡くしたことより、僕のことをずっと心配してくださった  僕の様子を見て泣きじゃくり、  「こんなふうになって・・・可哀そうに、可哀そうに・・・ごめんね、ごめんね」 と繰り返していた。  電話口でお母さんは、僕の健康を気遣い、近況を根掘り葉掘り尋ねて来た。  本当のこと話せば、お母さんを悲しませるだけ・・・  曖昧に答えるだけだった。  しばらく僕のことでやりとりが続いた。お母さんは、やっと本題に入った。  「実は七瀬の部屋の整理をしようと思うの。葬儀の後、本当ならすぐしなきゃならなかったんだけど、いろいろな手続きや主人の入院やらで後回しになっちゃって・・・  健ちゃんにも見てもらいたいの。  手元に置いておいてもつらいものばかりだけど、七瀬が一番、大切にしてた健ちゃんに・・・」  お母さんの嗚咽が聞こえた。  「そして七瀬が一番大好きだった健ちゃんに、持っていてもらいたいものがたくさんあると思う。  来てくれる?  いえ、どうしても来てね。  今度の日曜日。  いつでも構わないから・・・」
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