27人が本棚に入れています
本棚に追加
七瀬先輩のお母さん
携帯から七瀬先輩のお母さんの声が聞こえる。
七瀬先輩のお父さんの葬儀に参列した時のお礼をまず言われた。
お父さんは七瀬先輩が亡くなった一年後、癌で亡くなった。
その頃、僕、七瀬先輩か亡くなったショックから立ち直れないままだった。
学校に行くのもイヤで、進学の準備にも全く身が入らなかった。
学校以外、外に出たくもなかった。
おおげさだけど、最後の力を振り絞る思いで葬儀会場に行った。
七瀬先輩のお母さんは、ご主人を亡くしたことより、僕のことをずっと心配してくださった
僕の様子を見て泣きじゃくり、
「こんなふうになって・・・可哀そうに、可哀そうに・・・ごめんね、ごめんね」
と繰り返していた。
電話口でお母さんは、僕の健康を気遣い、近況を根掘り葉掘り尋ねて来た。
本当のこと話せば、お母さんを悲しませるだけ・・・
曖昧に答えるだけだった。
しばらく僕のことでやりとりが続いた。お母さんは、やっと本題に入った。
「実は七瀬の部屋の整理をしようと思うの。葬儀の後、本当ならすぐしなきゃならなかったんだけど、いろいろな手続きや主人の入院やらで後回しになっちゃって・・・
健ちゃんにも見てもらいたいの。
手元に置いておいてもつらいものばかりだけど、七瀬が一番、大切にしてた健ちゃんに・・・」
お母さんの嗚咽が聞こえた。
「そして七瀬が一番大好きだった健ちゃんに、持っていてもらいたいものがたくさんあると思う。
来てくれる?
いえ、どうしても来てね。
今度の日曜日。
いつでも構わないから・・・」
最初のコメントを投稿しよう!