プロローグ

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 七瀬先輩の親友の高木サキ先輩が、すっごく僕の入賞を喜んでくれた。  ショートカットで優しそうな目と柔和な口元がトレードマーク。七瀬先輩の悪口言う人間だって、サキ先輩のことはほめちぎる。(怒られるかな?)  男子はお友だち以上になることを願ってた。   七瀬先輩とは対照的な性格。なぜか親友同士。僕もいろいろとお世話になった。      この時だって、入賞のお祝いって、国語辞典の電子辞書をプレゼントしてくれた。  後のことになるけど、僕が先輩に怒られた時、  「最優秀賞の入賞者に何てこと言うの!日下君って才能のある人間よ。  北風と太陽なら、あなた、もっと太陽にならなきゃ」 とかばってくれた。  この時、七瀬先輩ったらぶっきらぼうに、  「知ってるよ。そんなこと!私、バカじゃない」 って言って横を向いた。  後で七瀬先輩から、  「そんなに最優秀賞のこと自慢したいわけ!   健ちゃんがそんなふうだから、私が悪く言われるんだ」 って論理不明なこと言われた。  サキ先輩のいないのを幸い、プロレスごっこさせられ、こてんぱんにされた。   ぜんぜん覚えもないのに、  「今後、最優秀賞の自慢をしない」 と誓いの言葉を言わされた。  「声が小さい!心がこもってない! 命令されていやいや言ってるのか!」 と何度も原っぱで叫ばされた。  地味な陰キャラの僕が、唯一、スポットライトを浴びた出来事だった。  ただしクラスメイトからは、  「最初から最後までのろけだ!」     
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