2.新しい日々

8/17
前へ
/199ページ
次へ
  「三途川さん、どうして俺と課長のこと認めてくれるの?」 「んんー、結構多いしね、私の周り。あんまりそういうの気になんないわ。でもそれは私くらいだと思っときなさいね。普通は受け入れないわよ、そんなの」  思ったより道が厳しいのだと分からされた。ただ一緒にいて幸せだ、そう思うだけでは蓮と生活していけない。自分が蓮の立場を危うくするわけにはいかない。  そうかといって、蓮から離れるなどとうてい出来やしない。 「俺、頑張ります。三途川さん、ありがとうございます」 「我ながらバカだと思うけどね」  三途川の笑顔にほっとした。 「これ、使わせてもらいます」  もらった包みを胸に抱いた。 「何か困ったことがあったら相談なさい。あんた、そんな相手もいないんでしょ?」  頷くジェイを見てふっと笑う。 「じゃ、私あんたの姉さんになってあげる」  ジェイの目が見開いた。兄弟なんて考えたことも無い。それが、姉さん?  立ち上がった三途川をただ見上げた。 「まったく! そういう時にはすぐ立つ! そしてさりげなく会計票を取る! 相手に払わせちゃだめ」  そう言われて慌てて立った。レジに会計を済ませに行った。 「そ! その調子ね。男同士で同僚ならいいの、割り勘でも。でも女性相手とか、取引先の人とか、そういう相手には支払をさせちゃだめ。そしてどんな時でも必ず領収書をもらって。『上様』じゃなくて、会社名でもらうのよ」  三途川は三途川で楽しかった。世間知らずで純を絵に描いたようなジェイ。出来るものならこのままでいさせたいけれど、それでは生きてはいけない。  本当に弟の面倒を見ているような気がする。   
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

703人が本棚に入れています
本棚に追加