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「三途川さん、どうして俺と課長のこと認めてくれるの?」
「んんー、結構多いしね、私の周り。あんまりそういうの気になんないわ。でもそれは私くらいだと思っときなさいね。普通は受け入れないわよ、そんなの」
思ったより道が厳しいのだと分からされた。ただ一緒にいて幸せだ、そう思うだけでは蓮と生活していけない。自分が蓮の立場を危うくするわけにはいかない。
そうかといって、蓮から離れるなどとうてい出来やしない。
「俺、頑張ります。三途川さん、ありがとうございます」
「我ながらバカだと思うけどね」
三途川の笑顔にほっとした。
「これ、使わせてもらいます」
もらった包みを胸に抱いた。
「何か困ったことがあったら相談なさい。あんた、そんな相手もいないんでしょ?」
頷くジェイを見てふっと笑う。
「じゃ、私あんたの姉さんになってあげる」
ジェイの目が見開いた。兄弟なんて考えたことも無い。それが、姉さん?
立ち上がった三途川をただ見上げた。
「まったく! そういう時にはすぐ立つ! そしてさりげなく会計票を取る! 相手に払わせちゃだめ」
そう言われて慌てて立った。レジに会計を済ませに行った。
「そ! その調子ね。男同士で同僚ならいいの、割り勘でも。でも女性相手とか、取引先の人とか、そういう相手には支払をさせちゃだめ。そしてどんな時でも必ず領収書をもらって。『上様』じゃなくて、会社名でもらうのよ」
三途川は三途川で楽しかった。世間知らずで純を絵に描いたようなジェイ。出来るものならこのままでいさせたいけれど、それでは生きてはいけない。
本当に弟の面倒を見ているような気がする。
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