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父と娘と、そして息子と
父「健斗、聞いてたのか。ずっとゲームしてるから聞いてないと思ってた」
健斗「お父さん、本当に子供の時に無人島に何回も遊びに行ったんだよね?お風呂に入るたびに少しずつ続きの話をしてくれたけど、面白かった」
琴音「お弁当を猿にとられたんだよね?」
父「ごめん、それはウソ」
琴音・健斗「えーーー!」
父「でも犬を連れて行って弁当を食べたり魚や貝を採ったのは本当のホント。猿がいたのも本当だけど食べ物を盗られたりはしてないよ」
健斗「でもお父さんが無人島に遊びに行ったのって健斗と同じくらいの歳の頃だよね。本当に1人で行けたの?」
父「内海(ウチウミ)っていって、お風呂の水面みたいに波のほとんど無い海だからね、健斗くらいの時でもゴムボートで簡単に行けたんだよ。遠い島じゃないし」
健斗「そういえば、お風呂の中で、オモチャの船が無人島にたどり着けるかゲームしたよね。手で波をおこしてオモチャがたどり着くか」
父「やったやった。子供たちで競争になって負けたら琴音が泣いちゃって」
健斗「もう泣かないから、もう一回競争やってっていうからやり直しても、また負けてもっと泣いて」
琴音「もうやめて!」
健斗「勝つまで泣き止まないから、最後はわざと負けてやったんだよね」
琴音「健斗だってお風呂で大泣きしたでしょ」
健斗「泣いてないよ!」
琴音「うそだ!お風呂に長く入ってたら手がふやけてシワだらけになって、『おばあちゃんみたいになっちゃったー』って泣いたでしょ!」
健斗「・・・・・・・・」
琴音「しばらくお風呂に長く入るのは嫌がってたよね」
父「琴音はよく覚えてるね。健斗はあの時、どうして泣いたの?」
健斗「泣いたのは覚えてるけど、どうして怖くなったのか覚えてない」
父「小さいときに、どういう心境だったのか思い出せないのは成長した証しなのかもね。お前たちはお母さんと一緒にお風呂入った時の思い出ってけっこうあるの?」
健斗・琴音「いっぱいあるよ!ねえ、お母さん!」
母「なにぃ??何か言った?」
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