もう一度声を聴かせてよ

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 二人の体温が上昇すると窓ガラスが曇り始めて、その濡れたガラス越しの月や星の僅かな光がとても綺麗で。視界が霞むほど強く締め上げられた首に感じる掌(てのひら)から、ドクンドクンと強い鼓動を感じた後の、急に軽くなったように解放される感覚は、堪らないほど気持ちが良かった。  重なり合い、揺らぎながら「好きだよ」と囁く声にゾクゾクするほど昂ぶり。私という存在が受け入れられている至福感に酔っては、嫌なこと全部忘れていられた。  願わくばあなたが私とこうして愛し合う度に、自分に自信を持ってくれたらいいのにと本気で思っていた。  馬鹿同士の慰め合いじゃなくて、いつか本物の愛になることを期待して、私はあなたの性癖を受け入れ、リクエストに応えたの。リベンジポルノが怖くて本当なら拒絶したかった動画撮影も、本当はいやだったのに、あなたと私の未来のために受け入れた。それが愛だと信じたから、賭けに出たの。  でも、現実は残酷だった。
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