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ガイストが、その場で立ち竦む白狼に弱々しい声をかけた。
慌てて駆け寄る。
「ガイスト。」
「やはりな、白…闇に堕ちても、染まり切らなかった。表では強がってはいたが、
その本質は変わっていなかった。完全な黒にはならない。いつか言っていたな。
“白い狼は孤独”誰とも交わらず、命を狙われ続ける。
だが、それだからこそ、虐げられた者、迫害された者達の心を理解し、助ける事が出来る。
見知らぬ誰かであろうと、損得があろうと、なかろうと、関係ない。
闇を歩き、光が照らし切れなかったモノに光をもたらす存在。
立派な正義だ。お前と過ごす日々、悪くはなかったよ。闇に堕ち切った自分が少しでも
明るくなれる、光の傍にいれたのだからな。」
「そんな事ない。ガイストだって、立派な正義だ。僕を守ってくれた。」
涙混じりの声になってしまう。ガイストがいつか言っていた。
“使命を果たせなかった騎士が取る道は一つ”静かに甲冑の手が動く。
「私は闇に堕ちる際に契約をした。自身が敗北を悟った時は、決して生き恥を晒さない。
自らでその身を焼く事をな。だが、これは恥の死ではない。名誉だ。
白、お前と言う最良の友の“新たな出発”を見届けた!だから、悔いはない。」
ガイストの騎士甲冑が熱を帯びてくる。抱きつこうとした白狼の体を、
暖かくなった手が押し戻す。嫌だ。こんなの嫌だ。
「さらばだ…白。」
「ガイストォォー!」
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