白狼無知で反逆戦線

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白狼は両の手に取り付けた器具のスイッチを入れた。装置を押すのではなく、神経に直接 設置し、念じる事によって起動させる代物だ。 “ランスな彼女”が驚いた顔でこちらを見つめる。普段なら、この表情は自分達が するモノだが、今日は逆だ。白熱した自身の爪は、彼女の槍をいとも容易く折り曲げていく。 こちらを見つめる少女に悔しさと涙が滲む。その表情に思わず 「ゴ、ゴメン。」 と声が出るが、もう遅い。体は自然に動く。いつの間にか 白狼は、両の爪を勢いよく前に出していた。 「あああああああーっ」 悲鳴を上げた彼女が吹き飛ぶ、地面に転がる。遠くで起こった爆発は、先程のマント男が 瓦礫に沈み、白狼と同じように体を光らせた同僚達が群がっている。 「本当に凄いな…」 呟く白狼は、自身に装着されたARMS“アームス” (Anti Ryrical Magic Strikes アンチ・リリカル・マジック・ストライクス 対叙情的魔法(こちらは萌えや漫画的に捉えているらしい)強襲ユニット) を見つめた…   「我等の勝ちだ。白!(白狼の呼び名)」 騎士形の同僚、というより、自身を拾ってくれた恩人“ガイスト”が 語りかけてきた。先程のランス娘、マント男達は拘束され、戦闘員達に連行されていく。 同じような光景が、町のあちらこちらで繰り広げられている。 今日は“悪”が“正義”に勝った日だ。白狼は瓦礫の町を見つめながら、考える。 思えば長い日々を過ごしてきものだ。 白狼として群れが疎まれ、猟師に追われ一匹、山をさ迷った日々。 やがて、妖力を得た自分は、人間達から崇められる信仰の対象にもなった。 しかし、それはごく短き事。時代が繁栄している時は敬われ、祭り上げられた身も、 飢饉や不作が続く時代に入れば、憎しみの対象となる。 人間の都合によって用意された刺客は陰陽道を礎とした少女… つまり、正義の味方だ。白狼は戦い、そして敗れた。
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