白狼無知で反逆戦線

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自身が求め、憧れた存在、居場所に行けると思った…しかし、それは叶わず、 狩られ、再びの孤独に落とされる。絶望と暗闇に堕ちた自分に手を差し伸べてくれたのは ガイストだった。 闇に堕ちたモノに“国境はない”と告げ (山で育った白狼に国境という言葉はよくわからなかったが) 「お互い、正義の守り手になれなかった身、居場所を作るために戦わないか?」 と仲間に誘ってくれた。以後、現代にいたるまで、あらゆる場所で戦ってきた。 時代が変わる内に、悪も組織化されていく。闇に堕ちるだけが、悪になる手段ではなく、 改造手術を受け、人外の力を手にする“元人間達”や外宇宙、別次元からの仲間も増え、 その分だけ、敵も増えた。しかし、ここに来て戦局は一気に傾く。ある集団がもたらした “新兵器”によって… 「あいつ等はどうするの?」 白狼は目の前を鎖に繋がれ、華やかな衣装を煤だらけ、破れだらけにして、連行される “魔法少女”の一群を指さす。悲壮感や不安を讃えた彼女達の表情は、負け続けの自分達 としては、悪くない。 「とりあえず、能力等を調べ、その後は普通の人間に戻して、解放だな? お前の故郷でもある島国は、正義の中心とも言える戦力が集中していたようでな。 さっきのマント男は海外からの応援組らしい。それほどまでに、 今回の戦いに全てをかけてたんだろうな。」 勝利の余韻に浸るガイストの口調は軽い。それに少し安心する。 普通の人に戻してか…先程のランスの悔しそうな顔が浮かぶ。自分が待ち望んでいた瞬間、正義に…正しい世界に選ばれ、奇跡にも守られ、そこでぬくぬくと生きていた奴等に 勝てた瞬間。の筈なのに…何故か、心が浮かない。もう一度ガイストを見て、尋ねる。 「本当に殺さない?」 「ん?まぁ、連中の指導者の何人かは見せしめ的な意味で処分するかもしれないが、 オイ、どうした?その顔は?泣きそうか?安心しろ。上の連中は人間の不安や恐怖を 媒介にして生きる闇だぞ?滅亡ってのは光を、正義を元にした文明社会をだ。 これから闇が跳梁跋扈する世界、それに怯え、絶望する、負のポジションを保つ人間が いなきゃダメだ。結局、我々もアイツ等無しじゃ、生きれないからさ。大丈夫だ。」
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