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ガイストの鋼鉄の手が、自身の大きい獣耳付きの頭に優しく載せられた。白狼が困った時や、泣きそうな時にこうやって慰めてくれるのが、ガイストの常だ。彼の言葉が続く。
「それに、我等が勝つ要因ともなった“アームス”は人間が作ったもんだ。
作り手がいないと、こっちが困るだろ?海外連中の反乱鎮圧とか、
まだまだ戦いは続くんだからな。」
白狼の手につけられたリング状デバイスをいじりながら、ガイストは語る。
こちら側の勢力に突如支給されたこの装置は、一瞬にして、戦局を変えた。
正義側が持つ、魔法や能力、そして、タイミングが良すぎる奇跡すらも“無効”にする
装備だ。その効果は目の前に広がる廃墟と、鎖に繋がれたボロボロの彼女達を見れば、
わかるだろう。
(どうやったら、こんな装備が作れるのか?)
当然、悪の幹部と技術者達は“提供者”にそう尋ねた。
しかし、返ってきた答えは
「俺達は、あらゆる世界を体験してきた。」
とハッキリしないモノ。とりあえず、効果が抜群なのは、証明されているので良し
という事になった。そうして現在に至る。
頭を撫でたガイストが、自身の手をどけた。甲冑の奥は暗闇で顔は見えない。
どんな時でも、素顔を見せてくれた事はないが、無骨ながらも見せる優しさに何度も
救われてきた。
「だから、そんな顔をするな。せっかくの勝利の日が台無しになってしまうぞ。」
「うん。」
「私はこれから、臨時に出来た本部に行かなければならない。あのやたらとデカいタワー
だが、1人で平気か?白。」
「大丈夫。子供じゃない。」
「ハハ、そうだな、すまない。それでは、後でな。」
騎士のローブを翻し、瓦礫に中に消えるガイスト。白狼も反対に踵を返す。他の同僚達が
不必要に人間を殺さないよう監視するためだ。
心に浮かんだ不安な気持ちはガイストのおかげで、だいぶ楽になったとは言え、
完全に拭えた訳ではなかった…
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