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「その神獣? 封印されているなら、今襲ってくるという事はないと考えていいんですよね?」
「と、思うわ」
「神獣を目覚めさせる神具は、王家で管理していたが、クーデターの際にアースラメントに略奪された可能性が高い。今、向こうは天災で混乱が続いていると聞いているから、こっちに無駄な茶々入れはしないと思う」
ハーディングの淡々とした話から、アリシアの事を思い出す。
(大変だろうな……)
アースラメント家に憎しみを感じてそうなハーディングの前で彼女の事を口に出すのは控えてはいたが、心配ではある。
コーネリアもアリシアの事を思うのか、黙り込んでしまった。
一番口数が多い彼女が何も喋らなくなると、急に静かになる。
誰も口をきかないまま、黙々と道を歩き、チョロチョロと流れる小川を渡る。
(そろそろ休憩を取ったほうがいいか? コーネリア様が静かになったの、疲れてるせいもあるだろうな)
後ろを振り返り、コーネリアの様子を見てみると、顔に疲れが出ていた。
「あの……そろそろ……」
――ギィィィイィィイイン……
ジャックがコーネリアに声をかけようとした時、突如として重い金属がぶつかるような音が聞こえた。
「今、何か聞こえませんでした?」
「聞こえたな……、誰かが剣で戦ってるのか?」
遠くの方で鳴るような、僅かな音だったため、気のせいかと思ったが、ハーディングも聞こえていたらしい。
「大丈夫かしら……?」
コーネリアが不安そうに身を縮めた。クーデターでの苦い経験を思い出しているに違いない。
「ちょっと離れた所に行きましょう。何が起こっているか分かりませんが、危険でしょうから」
目的地から遠ざかる事になるが、身の安全を優先すべきだと、提案する。
「でも……」
「コーネリア様、イングラム家の兵士達が襲われていると考えておられるかもしれませんが、それはないです。俺が逃げる手引きをしたので、保証します」
「分かったわ。離れましょう」
――ゴゥン……ドス……ドス……
再び重低音の金属音が聞こえた。
(何かが、近づいてきてる……)
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