10章

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◇  腐葉土に足を取られそうになりながら、森の中を進んで行く。  ジャックは元の時代で一度ここに来ているが、記憶しているよりも緑の密度が濃いかもしれない。    コーネリアとハーディングを再会させてから、直ぐにローズウォール市街地からすぐ北に広がる森林に踏み入っていた。 「コーネリア様、足元にお気をつけください」 「貴方に心配されるのとても好きだわ」    強い同行者が1人増えた事で、非常に心強いのだが、 先ほどから聞こえてくる甘ったるい会話で、ジャックはダークサイドに落ちてしまいそうだ。 「アイツラ オイテコーゼ」  ジャックの肩に乗っかるヨウムも男女がイチャついている会話に嫌気がさしてきたのか、毒舌が止まらない。 「久しぶりに会えたから、周りが見えてないんだろ。我慢しよう」  3人の集団の中、そのうち2人がカップルだった場合の除け者感は半端ない。  ヨウムがいてくれて良かった。 「ヨウム、こっちの方向で大丈夫か? ミッドランド伯爵家のカントリーハウスの場所に向かってるんだからな?」 「アッテル」  獣道の様な細い小道を3時間は歩いただろうか?  時代が違うからしょうがないのかもしれないが、一度来た場所だというのに、風景に全く覚えがない。 「この先は古くから神獣が封印されてきた場所よ」 「神獣……?」  コーネリアの言葉に出てきた『神獣』という単語は覚えがない。 「通常の獣にはない魔力を持つ存在を魔獣なのだけど、神獣はそれらのさらに上位の存在と言ったらいいのかしら? 神話の時代、神々が創造した生き物と言い伝えられているのよ」  コーネリアの説明が正しいとするなら、今自分達はかなり危険な領域に踏み込もうとしているのではないだろうか?  エクスカリバーはミッドランド伯爵家のカントリーハウス地下に封印されていた事から古代王の居場所を推測したが、全くの見当違いという可能性もあるのだ。  というか、神獣の話をシエルもアルマもしていなかったはずだ。  自分達が暮らす周辺にそんな危険な存在が眠っているというなら、何か説明があってもいいような気がするが、ジャックがよそ者だという理由から説明されなかったという事なのだろうか?
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