10章

33/47
前へ
/454ページ
次へ
「急ぎましょう」  腹に響くような音が不気味で、ジャックは2人を促し、音の方向から離れるように誘導する。森林の中、傾斜になっている獣道を上へ上へと進む。 ――バギバギバギ……  木々を折りながら、何か巨大な存在がこちら側に近づいて来るのだ。  圧倒的な存在感を感じると、緊張感から鼓動が速くなった気がした。  腕にはめた腕輪が熱を持ち始めている。 (もしかしてこれって……) 「ちなみに、この辺に封印されているのは、どの様な神獣なんですか?」 「タローンという巨人よ。その身体は金属で構成されているらしいわ」 「うーん……、非常に嫌な予感がしますね……」 「奇遇だな。俺もだ」  ハーディングの方を見ると、精悍な顔をこれでもかというくらいに顰めている。  坂道を登り切り、木々がない箇所までくると、少しだけ坂下の森の様子が見渡せた。 (何も……いないか? 巨人なら見えそうなものだけど……) ――バギバギバギ!  安心しかけたのもつかの間、視線を向けていた方向で、木々の枝が上空に吹っ飛び、巨大なナニカの上体が現れた。 「う……嘘だろ……?」  青銅色の巨人は木の高さの3倍はあるだろうか?  考えていたよりもずっと巨大だ。  その存在が、こちら側を振り返る。  巨人の頭部に2つはめ込まれた目の様な何かがジャックを見た。 (目が合った……)
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!

144人が本棚に入れています
本棚に追加