144人が本棚に入れています
本棚に追加
「急ぎましょう」
腹に響くような音が不気味で、ジャックは2人を促し、音の方向から離れるように誘導する。森林の中、傾斜になっている獣道を上へ上へと進む。
――バギバギバギ……
木々を折りながら、何か巨大な存在がこちら側に近づいて来るのだ。
圧倒的な存在感を感じると、緊張感から鼓動が速くなった気がした。
腕にはめた腕輪が熱を持ち始めている。
(もしかしてこれって……)
「ちなみに、この辺に封印されているのは、どの様な神獣なんですか?」
「タローンという巨人よ。その身体は金属で構成されているらしいわ」
「うーん……、非常に嫌な予感がしますね……」
「奇遇だな。俺もだ」
ハーディングの方を見ると、精悍な顔をこれでもかというくらいに顰めている。
坂道を登り切り、木々がない箇所までくると、少しだけ坂下の森の様子が見渡せた。
(何も……いないか? 巨人なら見えそうなものだけど……)
――バギバギバギ!
安心しかけたのもつかの間、視線を向けていた方向で、木々の枝が上空に吹っ飛び、巨大なナニカの上体が現れた。
「う……嘘だろ……?」
青銅色の巨人は木の高さの3倍はあるだろうか?
考えていたよりもずっと巨大だ。
その存在が、こちら側を振り返る。
巨人の頭部に2つはめ込まれた目の様な何かがジャックを見た。
(目が合った……)
最初のコメントを投稿しよう!