10章

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「やばい、気づかれたかもしれません」 「あれは、古代遺跡に描かれていたタローンの姿にソックリだわ」  コーネリアの方を見ると、彼女は青い顔で巨人を見つめていた。 「え、じゃあアレがさっき言ってた神獣……?」 「だろうな」  青銅色をした巨人タローンは、こちら側を呆けた様子で見つめている。  しきりに首を傾げ、頭をポリポリと掻いている。 「何やってんだアイツ……。まるでヨウムみたいな動きだな」 「シツレイナ! バカト イッショニスルナ!」  ジャックの煽りに反発し、ヨウムがキー! と奇声を上げると、タローンは前傾姿勢をとり、瞳を赤く輝かせた。  ヨウムにバカと言われ、気分を害したのかもしれない。  口をパカリと大きく開けた姿は何とも言えずに不気味だ。 「あの姿勢、どういう事なんだ……」 「まずい気がする……。2人ともこの場から逃げよう」 「え、ええ!」  焦った様子のハーディングがコーネリアの手を引き、再び森の中に走る。  ヨウムもジャックの肩から飛び立ち、2人の後を追った。   「ジャック! グズグズするな! 急げ!」 「はい!」  ハーディングに促され、ジャックも森へと向かう。   その途中タローンを観察すると、その胸は赤く染まり、マグマの様に溶け落ちそうに見える。触れたら火傷ではすまないだろう。 (これから何か攻撃する気なのか?)  ジャックが森に入り、もう一度タローンの方を見ると、ちょうど胸の赤みが無くなった瞬間だった。   ――ドォォォォォオオオオオオオ  タローンの口から何かが吐かれた。  そう認識できるのと、そばを赤い炎の壁が通り抜けるのは同時だった。 「うっそ……」  タローンの位置から、ジャック達が先程までいた位置を結んだ線上のなにもかもが燃やされていた。いともたやすく山火事を起こす様を目の当たりにし、タローンという存在が神獣と呼ばれる所以が良く理解出来た。    
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