10章

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 ここまで来たルートは火事になっており、戻れる様な状態ではない。   「下がっていろ」  ハーディングが右手を上げると、上空に巨大な古代文字が浮かび上がった。  水色に輝くそれは、グルリと光の輪になり、強く光を発した。    青空の中、ここだけに黒い雲が発生する。 ――ザァァア……  雲はバケツをひっくり返したような雨を降らせた。 「なるほど、炎を鎮火させるんですね」 「これで歩き道に危険は無くなるだろう」  森を燃やす炎は徐々に収まり、小道を進んでいけそうだ。  2人で来た道を戻る。 ――ズゥゥゥン!!  30m程離れて、タローンの姿が見えた。  巨人は、人間と称するにはややシンプルな造形の青銅色の身体をしている。  顔のノッペリ具合などもあり、間抜けなルックスだ。  タローンはジャック達2人を見つけると、歩みを止め、周囲の木々を腕で薙ぎ払った。  簡単に吹き飛ぶ木々を見ながら、ジャックは眉根を寄せる。 (何て力だ……。巨木をいとも容易く飛ばせるのか。それに身体を構成するのは金属か? 真正面から突っ込んだらまずそうだな……)  ジャックは神獣について無知だ。  どうしたもんかとタローンを見つめたまま、考えるうちに、奴はドンドン近寄って来る。  こちらに意識を向けさせておけば、コーネリアに危害は加えられないだろうが、このままではまずいだろう。 「ハーディングさん。奴を倒そうと考えてます?」 「全力でいかせてもらう。コーネリア様の封印に期待、と言いたいが、そもそも可能なのかすら不明なのだからな」 「そうですよね。では俺もそのつもりで、向かいます」 ――ドゥン……ドゥン……ギギギィ  タローンはすぐそばまで迫っていた。   (改めてみると……半端なく巨大だな)  人に近い姿をしているからか、タローンの姿がやたら不気味に見える。    ジャックはエクスカリバーを正眼に構えた。  
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