10章

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 脳にダイレクトに語り掛ける様な声は、ジャックにしか聞こえていないのだろうか?  ハーディングは先ほどの倍ほどの大きさのプラズマを頭上に貯めており、タローンの声が聞こえていないように見える。 「あいつから何か話しかけられていませんか?」 「アイツは何も喋ってなどいない。気が散るから今は話しかけないでくれ」  イラついているようなハーディングは嘘をついているようには見えない。 ――鞘の……青い石ころはどうした……? 「石……?」  エクスカリバーの鞘は、アストロブレームでアリシアに譲られたホルダーに括りつけ、背負っているのだが、最初から青い石は付いてなどいない。  だが、青い石と聞くと覚えがあるような気もしてくるのだ? (青い石を、最近触ったような……)  思い出せそうで思い出せない歯がゆさを感じる。 ――エクスカリバーの性能を、引き出しておらん。石もない。……その剣を、奪ったのか? 「奪った? 違う! 俺はミッドランド家当主に所有を認められている!」  タローンからの失礼な言葉に腹が立ち、ジャックは声を荒げた。 「さっきから何を独り言を言っている!」  ハーディングは頭上のプラズマを再び矢にしてタローンに向けて放った。  激しいプラズマの矢がタローンを襲い、その姿を光で覆い隠す。 「やったか……?」  攻撃の激しさに、致命的なダメージを期待したが、光が消え、タローンが姿を現すと、落胆した。  所々黒ずんだだけで、大したダメージを食らってはいなかったのだ。 「まだです……。ハーディングさん、話を聞いてください。俺はさっきからタローンに話しかけられているんです。脳に直接語り掛けられてる」 「俺には何も聞こえないが……」 ――話にならぬ……やはり駆除せねば……  タローンが頭上に斧を振り上げると、奴が持つ斧は赤く染まった。  見るからに攻撃力が上がってそうな斧を、ブンブンと振り回しながら、タローンはこちらに近寄ってくる。
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