10章

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 周囲の木々が切断され、燃えながら左右に吹っ飛んだ。 「化け物め……」  ハーディングは、2人の目の前に魔術の障壁を2重にも3重にも張る。 「タローンには魔術が効いていなそうです。神獣は普通の魔獣とはわけが違うという事なんですか?」 「俺も神獣を相手にするのは初めてなんだ。これ程までに防御力があるとはな……」  タローンが直ぐ傍まで迫った。  巨人は障壁に、燃える斧で叩きつける。 ――ガン! ギギギィ……  たった一撃で障壁に亀裂が入った。 (うわ……)  思わず目を抑えて空を仰ぎたくなる。 ――ガン! ガン! ――バリン!  たった3発で障壁が割れてしまった。 「ハーディングさん……」 「……数で勝負だ……」  ハーディングはムキになった様に障壁を貼り続けるが、打ち破られるスピードの方が速い。  肩で息をし、大量の汗を掻くハーディングの様子を見ると、この状態が長く続かない予想してしまう。 (何か、何か方法は……)  ジャックは必死に頭を働かす。 (一か八かでやってみるか?) 「ハーディングさん! 俺のエクスカリバーに氷の魔術を行使する事は出来ますか?」 「他人の剣を魔剣化するのはやった事がないし、成功例も聞いた事もない。だがその剣ならもしかして、可能なのか?」  ハーディングは迷うような表情を見せるが、直ぐに迷いを捨て、ジャックの方に右手を向けた。  エクスカリバーの刀身に白い魔方陣が浮かぶと、みるみるうちに刀身に霜が現れた。  手をかざしてみると、痛いくらい冷気を感じる。 「成功しているみたいです!」 「よし!」 ――無駄だ。青い石ころを介したエネルギー量、足りない……。 「やってみなければ分からないだろ!」 ――バリン!  最後の障壁が破られた。 「ジャック! 俺はエクスカリバーの魔術をかけ続ける。お前は戦闘に集中しろ!」 「はい!……うわ!」
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