10章

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 タローンの身体は全身が赤く染まった。  高温になっているその身体には、指一本触れる事すら避けるべきだろう。 (コイツも本気の力を見せるって事か……)  タローンは炎が揺らめく斧をジャックに向けて大きく振った。  頭の中で、空気を斬り裂く様を思い描く。  酸素がなければ炎は消えるはずだ。 (このイメージを力に!)  青く輝く聖剣をタローンに向けて振る。  そうすると、目に見えない真空の波動がエクスカリバーから放たれた。  ジャックの力とタローンの力がぶつかり合う。  しかしそれは長くは続かなかった。  真空派が炎をみるみるうちに消し、強力な力でタローンの身体を引き裂いたのだ。 ――……貴様を……認めよ……う。  タローンの身体は切り裂かれた部分から砂の様にザラリと崩れ、僅かな風で吹き飛び、後には何も残らなかった。  ジャックが持つエクスカリバーが一瞬赤い光を放った。 (なんだ?)  その光は気のせいかと思うほどすぐに消えてしまう。 (赤い光は何の意味が?) 「お前は凄い奴なんだな……、見くびってて悪かった」  ジャックが地面に降り立つと、ハーディングが近づいて来る。 「いえ、俺はあなたとの戦いの時、迷いを見せてしまった。見くびられても仕方ないと思いますよ」 「人を殺すのが怖いか?」  ハーディングに心を見抜かれ、視線を地面に落とした。 「抵抗は、有りますね」 「迷いを捨てろ。でなければ大事なモノを失うぞ」  誰も殺さずに、大切な何かを守る事だって出来るのではないか? そう言い返したくなる。でもいつかは選択を迫られる時が来るのかもしれない。 ◇  ハーディングと2人でコーネリアとヨウムの後を追い、タローンが封印されていた場所まで向かう。  意外と遠い場所にあるそこは、大人の男の足で歩いても20分はかかった。
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