10章

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「いや、私は初めて会った。……恐らくだが、息絶えた私の身体の構成要素を使って、この剣が一時的にわたしの身体を再現したのだろう」 (シエルとかに言わせたら粒子を使ってどうこうって事なのか? うーん、やっぱ良く分からないな)  魔術的な話に慣れてきたつもりだったが、やはり理解が追い付かない。 「じゃあ、初対面という理解でいいんですね」 「そういう事になる。タローンを倒せたという事は、所有者として相応しい人物の手にエクスカリバーが渡ったのだな」 「それは、何ともいえませんが……。そもそも何故タローンの封印を解いたんですか?」 「この領地の中で、エクスカリバーを封印させる事が出来るのはちょうどタローンを封印させていた場所しかなかった。だからこの場所の見張りがいなくなった隙を見計らって忍び込み、タローンの封印を解き、エクスカリバーの封印を施した。もたもたするウチに見張りが戻ってきてこのざまよ」 「そうだったんですね……」  正直言って、迷惑極まりない神獣だったが、アーロンの状態を見ると、責める気にならない。 「鞘の石の力も無事及んでいるようだな。所有者が自ら力を引き出せたのを確認出来て良かった。これで安心して死ねる……」 「お父様! 死ぬなんておっしゃらないで。わたくし達と一緒に逃げましょう!」 「アーロン様、コーネリア様と一度国外に向かう予定です。貴方様もどうか一緒に……」  コーネリアに治療されているのに、死ぬ事を考えているという事は、アーロンは自殺するつもりなのかもしれない。でもジャックとしては、自分と関わりをもった人間に死んでほしくはない。 「アーロンさん、俺はこれからまたアストロブレームに戻ります。向うには、あなたが死んだと伝えておきます。だからどうか、逃げ伸びてください」  もしかすると、歴史が変わるのかもしれない。  でもジャックは目の前で死のうとしてる人間に生きてほしいと思うのだった。
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