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「あなたと言う存在に、お父様は救われたのよ」
婦人は微笑みながら、自分に言った。白い布地に包まれた骨壺は、さらに小さくなっているように見えた。
★★★
来客を見送り、婦人は事務所へと戻った。
「帰ったの?」
そこには、事務長を務める姪が婦人を待っていた。
「ええ、帰られたわ」
婦人は、事務所に設置されたコーヒーサーバーから、自分のマグにコーヒーをつぎながら姪の言葉に頷いた。
「何しに来られたのよ」
「弔問のご挨拶。遺骨付きだったわ」
「はい!?」
軽く返事をすると、姪はすっとんきょうな顔になった。
「なんで遺族の方が、弔問のご挨拶来るのよ」
「父に会って欲しかったんですって」
婦人は、客に言われたままの言葉を、隠すことなく告げた。
「わざわざ、重い遺骨を持って? 何を考えているんだか」
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