言葉

　別に潰したって良いのだ。　
　ただ、まあ。
　夫の息子は、思っていた以上に「まとも」ではあったな、と婦人は思った。
　毎回、行事の折々に夫は自分の息子の写真を送り付けてきた。出産の報告、七五三、小学校の入学式･･････。何を考えて。そして、何を望んでそんな写真を送り付けてくるのか、全然わからなかった。
　共に写っている夫はどこか誇らしげで、「すごいだろ」と言っているようにも見えた。
　けれど、子どもの学年が上がってくるに連れて写真も送られて来なくなり、久しぶりに送り付けてきたのが、息子の成人式の写真だった。
　玄関らしい場所で、仏頂面で写っているのは、息子一人だった。　
　そして、それが夫からの最後の便りとなった。　
　その後、離婚したのだろう。