7人が本棚に入れています
本棚に追加
あの頃。
自分に、少しでも夫の思いを受け入れる余裕があって。
夫に、少しでも「頼られている」と言う実感を持たせることができたのなら。
今とは、違う未来があったのだろうか?
夫の息子に言った言葉は、嘘ではなかった。
夫は、「息子」という存在を得ることで、短いかもしれないが、「頼りにされている」という喜びを感じることができたのだ。
それは、自分が与えることができなかった感情(もの)だった。
「では、理事長。確かに我が法人は遺骨の引き取りを行い、供養していますが、それはあくまでもこの法人の施設を利用する人達のためです」
口調を改めた姪に、婦人は苦笑を浮かべた。
「大丈夫よ。真っ当な神経を持っているならば、少なくともうちに預けようとは思わない話し方をしたから」
最初のコメントを投稿しよう!