7人が本棚に入れています
本棚に追加
「えーと、菊池(きくち)……さんですか?」
「あ、はい。私が菊池紗枝子(さえこ)です。東(あずま)さんの息子さんですね?」
夫人は、父の苗字を呼んだ。
「轟木(とどろぎ)友朗(ともろう)です」
いつもの習慣で、今の姓名を名乗ってしまい、しまった!と思った。
「あら。苗字が違うの?」
「はい。三年前に、私が成人したのを機に離婚したので」
「そうなの」
自分の言葉に頷くと、婦人は向かい合わせの席に座った。
「今回は、ご愁傷様です」
そして、それ以上は何も聞かず、弔問の挨拶をしてくる。
「ありがとうございます。父も喜んでいると思います」
それをありがたく思いながらも、自分は白い布に包まれた骨壺を婦人に差し出した。
「もともと小さい人だったけど、さらに小さくなったわね」
最初のコメントを投稿しよう!