言葉

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「私は、三姉妹の長女でね。ふつーの一般的家庭で育ったの。でも、両親が何を思ったのか定年間近に退職して、小さい老人ホームを作っちゃって。その頃は私も実家から離れていたし、両親も『別に継がなくて良い』って言ってくれてね。でも、妹達が先に嫁に行って、老人ホームも事業が大きくなって、そうも言っていられなくなってね。そんな時に、知り合いに紹介されたのが、あなたのお父様だったの」 「父は、どんな夫だったのですか?」 「良い夫だったわよ」  でも、この問いかけの答えは、意外なものだった。 「私の姓を名乗ってくれたし、家事も積極的にしようとしてくれたしね。仕事が主流になりがちな私に、文句も言わなかったし」  ふふふっと笑いながら、婦人は楽しそうだった。 「まるで新妻みたいでね。とても可愛かったわ」
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