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「けれど、あなたのお父様はそれがご不満だったみたいね。別れる時にね、言われたわ。『もっと、自分を頼って欲しかった』ってね。その言葉は、今でも覚えているわ」
「父は、頼りになる人ではなかったですよね」
「私はね、一生懸命なあの人を見るのが好きだったの。わかってはいたわ。私の仕事を手伝いたいって、考えていることもね。でも、『仕事』は、私的な感情を取り除く場所でしょ? まして、私は『後継者』として見られていたしね。とてもじゃないけど、あなたのお父様が働ける場所はなかった」
婦人は、はっきりとは言わなかったが、ようは「足手まとい」になるとわかっていたのだろう。おそらく、彼女は「公」と「私」をはっきりと分ける人だった。
だけど、父はそうじゃなかった。
「公」も「私」も分けることができず、勝手に彼女にコンプレックスを持ち、おそらくは当時は「自分を頼ってくれる」母の下へと走ったのだ。
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