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ただでなくても追い付けない距離なんだ。アンタの前で情けない姿見せたくないの、なんで察してくれへんの。恥ずかしいこと情けないこと、全部アンタには見せたくないのに。なんで。
「情けないのなんて、お互い様だろ」
からかうような笑いを消して 先輩はしゃがみこむ。
「俺さ、情けないのもカッコつけなのも、全部込みでお前が好きだよ」
しゃがみこんで俺の両頬を両手で挟む。
厳つい掌に挟まれて顔が潰れた。ふひっと笑って先輩はまた、俺の唇に吸い付く。
「俺の負担になるまいと悶々とするのも可愛いけどさ、俺ってそんなに信用ない?」
「それ、は」
反駁しようとした言葉をまた唇に食われた。
「なにビビってっか知んねーけど、喧嘩したっていいじゃん」
また、ちゅって音を鳴らして色気のないキスをする。
「話せばいいじゃん、叫べばいいじゃん。お前の声なら、俺、ちゃんと振り返るよ」
前を行くものの声で先輩は言う。
自分が、先に行くことを前提として話す。
俺が、ついてくることを疑わないで。
「置いてく気満々やないですかー……」
不貞腐れた声。言葉尻が情けなく萎む。
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