Ⅱ 桜と空部屋と自白強要

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 ただでなくても追い付けない距離なんだ。アンタの前で情けない姿見せたくないの、なんで察してくれへんの。恥ずかしいこと情けないこと、全部アンタには見せたくないのに。なんで。  「情けないのなんて、お互い様だろ」  からかうような笑いを消して 先輩はしゃがみこむ。  「俺さ、情けないのもカッコつけなのも、全部込みでお前が好きだよ」  しゃがみこんで俺の両頬を両手で挟む。  厳つい掌に挟まれて顔が潰れた。ふひっと笑って先輩はまた、俺の唇に吸い付く。  「俺の負担になるまいと悶々とするのも可愛いけどさ、俺ってそんなに信用ない?」  「それ、は」  反駁(はんばく)しようとした言葉をまた唇に食われた。  「なにビビってっか知んねーけど、喧嘩したっていいじゃん」  また、ちゅって音を鳴らして色気のないキスをする。  「話せばいいじゃん、叫べばいいじゃん。お前の声なら、俺、ちゃんと振り返るよ」  前を行くものの声で先輩は言う。  自分が、先に行くことを前提として話す。  俺が、ついてくることを疑わないで。  「置いてく気満々やないですかー……」  不貞腐れた声。言葉尻が情けなく萎む。
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