Ⅱ 桜と空部屋と自白強要

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 在校生代表で登壇しよんねん。  あんた送るためのハナムケの言葉なんて、読むんやで。  「何?あんま嬉しくなさそうだな」  いくらなんでも鈍すぎでしょ。  どんだけ間を置いて気がついてんの。  嬉しいわけなん、ないでしょ。  俯いたら余計な言葉が目玉の液体と一緒に溢れそうで情けなくて息を吐いて空を見た。  「な?俺居なくなんの、寂しい?」  わざと空を仰いだ俺の顔覗き込んで、あんたは笑う。  俺の気持ちなん、全然考えんと笑う。  「日下ー、泣くほど寂しい?」  なんなんこいつ。  あんだけ俺にいろいろ我慢さしといて、あんたのためだって思わせといて。  「なあ、俺と一緒にいたい?」  それ言ったらなんか変わるんか。  あんたの負担にならんように、ならんようにしてんのに。  「な、一緒にいたいって言えよ」  なんなん、その誘導。  「言ったら、日下、ええもんやんで?」  ふひっと笑ってイントネーションおかしい関西弁。学ランのポケットでチャリチャリ金属音。  「あんな、一等(いっとー)最初にゴーカク伝えたかったんだけどなー」  なんやねん、が頭の中渦を巻く。  人んこと置いてっていつも勝手で、俺ばっかり踊らされる。踊らされて翻弄される。    「ケータイ支払忘れてた」  どんだけテンパってんだよって話だよなー。  あっけらかんと笑う顔。  ほんま、なんなん、この人。  憎らしいのに好きすぎて、好きすぎて、その手に縋ってた。  ほんまはどこも行かんで欲しい。  そんなん言っても、なんも変わらん。
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