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第4章 焔 万里
砂城でのミーティングが終わり、三人で更衣室で機人使い専用のスーツに着替えている時、大典と高天は凍りついた…
「焔…その身体?」大典は思わず口に出してしまった。
「ああ…これは、東京にいた頃に事故で」万里はそう言うとスーツに着替えた。
万里の身体は8割が機人の技術で出来ており、生身の部分は頭部及び脊椎の1部そして内臓機関でほぼ小型の機人に見えた。
大典は噂では聴いたことがあった…人間サイズの機人の存在を…
「まさか…本当にいるとは…」大典は複雑な表情で万里を見た。
「全身が円盤状の楯に覆われていますね?」高天は広角の索敵モニターで敵機を確認して報告した。
「うかつに飛び込めんな…」大典は戦慄を覚えつつ身構えた。
「僕が牽制します!」万里はそう言うとほぼ素体の刃我に薙刀を構えさせると、飛び出した。
「まっ、待てっ!!」大典は言ったが万里の刃我はすでに100メートル先にいた。
「援護します!!」咄嗟の判断で高天の刃我がDA615を構えて、豪巌部隊に向けて射撃を開始した。
高天の放った弾道は狙いこそ良かったが、豪巌部隊には当たらず大地を削っていた。
「いいとこ狙うじゃん!」美亜は笑いながら、鈍重なはずの豪巌を素早く回避させていた。
「一機来るよ!!油断しない!!」純姫は美亜を叱りつつ、円盤楯を全面に出して突っ込んでくる刃我を迎え撃とうとした。
「もう一機…前から来る敵のすぐ後ろにいる…」愛蘭は関心無さげに、高天の射撃を避けながら報告した。
「いいね!積極的な男は好きだよ!」美亜は舌舐めずりをして、純姫の豪巌のすぐ後ろに貼り付いた。
「君は蘇る事になるが…それが果たして良いことかどうかは、私には答えられないな…」機械生体工学の権威の藤代錬太郎は早口にそう言うと、高濃度の液体酸素のカプセルを撫でながら、そこに静かに眠る焔万里に伝えた。
「機人との生体直結(ダイレクトリンク)は、確かに反応速度、可動域共にずば抜けて良いですが…やはり、脳へのダメージは否めませんな」錬太郎は機人のコントロールの要である人間と機人との融合に着目していたが、リスクの方が高くとても公に研究出来る課題ではなかった。錬太郎は何度か非人道的な実験に何度か参加したが、どれも納得行く結果は得られず今に至っていた。
そして、そんな折に東京自治区に機人が現れた…
錬太郎の元に運び込まれた焔万里は生きてはいたが肉片の塊に見えた。
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