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第7章 撃皇
さらに刃我の隣には、阿修羅同盟側の最新現用機人「煉獄(レンゴク)」が整然と各ハンガーに並べられていた。その壮観な眺めに三人は圧倒されていた。
「こちらの機人を使われますか?」三人を案内してくれていた女性人事官は軽く勧めた。
「武装も最新鋭のGRKAライフルに…JVA482支援機関銃…それに…」大典は周りを見渡しながら整備ハンガーの端に目をやると、一機だけ刃我に似た機人を見つけた。
刃我よりもシェイプアップされていて無駄なパーツが無く、どことなく万里に似ていると思った。
「あの機人は?…」大典は指を指して女性人事官に尋ねた。
「ああ、あれは煉獄の前世代のプロトタイプ(撃皇)ゲキオウですね!」
「前世代?…」
「前世代、撃神(ゲキシン)の先行試作型ですね!」女性人事官は大典の質問に隠し立てなく答えてくれた。
「撃神?…聞いた事あるな…」大典はそう言うと、言葉が詰まった。
「優秀な機人だったのですが…機人使いが誰も使いたがらなくなってしまって…」女性人事官も軽口が止まった。
「うん?どうしたの?」はしゃいでいた高天は周りの空気が変わってしまった事に全く気付いていなかった。
「なあ、焔…あっちへ行こうか?」誤魔化しきれないが大典は違う所へ万里を誘った。
だが、万里は大典の声は聞こえていないように女性人事官に尋ねた。
「この機人は、使えますか?」
「いや、ええ…だっ、大丈夫だと思いますが、この機人はあくまで試験タイプ機人で、今は最終データ収集も終了したので、解体する予定の物なのですが…」
「構わないです…細かいセッティングは、僕も参加させて頂きます…」万里は礼儀正しく女性人事官に告げると、近接武装装備のエリアを見に行ってしまった…
「いいのかい?…あんた達にとっては、忌み嫌われた味方殺しの機人(撃神)のプロトタイプに弟を乗せても?…」大典は凄む様に女性人事官に言った。
「彼は、我々にとっては憎むべき(仇)とも言える者の血縁者ですが、上層部は彼の希少性に価値を見出だしています…」
「高性能のモルモットか…」大典はいままでの気分が嘘の様に萎えた。
「あの~僕は煉獄を使用したいのですが?」高天は女性人事官に媚びを売っていた。
「俺は使い慣れた刃我を使用する…武装は借りさせて貰おう!」大典は女性人事官を見ずに言った。
刃我と同世代の軍事行動執行機人「撃皇」はこうして、焔万里の手に渡った…
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