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第8章 太西洋の覇武羅
「今回の任務は、覇導元老院の機人の運用試験の演習です!水中での任務になりますので、各自装備のチェックは念入りにお願いします!」
阿修羅同盟側の情報官の物言いは慇懃無礼で耳障りが悪かったが、
機人と装備はこの上なく良かったので、三人は不満を漏らさなかった。
「水中戦闘は、僕は初めてです…」高天は不安を隠さず言った。
「僕も経験はありません…」万里も素直に認めた。
「俺は過去に数回だが、経験している…説明しよう!」大典は情報官が退席したミーティング室で二人を近くに呼び寄せ、大型ディスプレイに過去の画像、動画を映して、噛み砕く様に時折、二人の質問にも答えながら説明した。
「相手方は上位軍経産組織の覇導元老院で、しかも残念ながら、いつも通り敵の装備、性能、機人の名前すら解らない状態だ…迂闊に…特に焔!前へ出るなよ!」大典は万里に釘を刺した。
「解りました」万里は素直に返事をした。
「僕も大丈夫!迂闊に出ないよ!」高天も素直に了承した。
大西洋中央海嶺…南北に大西洋を貫く数千キロにも及ぶ海底火山帯が連なる海の火山帯…
「作戦ポイントに到着しました!」覇導元老院側の情報官が水中戦装備の「覇武羅(ハブラ)」頭部のコックピットに陣取る「劉義光(リュウ ギコウ)」に伝えた。
「相手は阿修羅同盟の機人(煉獄)か…こちらは一人だが、問題は無い!…俺にはこいつらが付いているからな!」義光は超大型潜水母艦「白鯨(ハクゲイ)」の下部浸水ハッチから静かに降下した。
そして、義光の覇武羅の両脇にピタリと貼り付く様に、覇武羅と同じサイズの大型魚雷に似た
水中戦闘専用無人統合火器管制装備「海竜(カイリュウ)」が義光の覇武羅を護るべく追従していった。
高天は煉獄の水中装備を見ていると何気に昔を思い出していた。
「あいつ…ちゃんと船乗りに成れたのかな?…」出撃前に郷愁暮れる自分の頭を叩きながら高天は煉獄のコックピットへと向かった。
煉獄の水中装備は可動域に影響の出ない耐水圧シーリング加工を施して背部と脚部には水中用のハイドロジェットをセット、両腕部には多弾頭誘導ミサイル魚雷を取付けた。
「泣き虫、高天…ちゃんと家の仕事継いだのかな?…」義光はかつての親友に思いを馳せながら、覇武羅と海竜を巡航速度へ移行した。
幼い頃…張高天と劉義光の二人は小さな町の隣近所に住んでいた。
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