第9章 二人の希望

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第9章 二人の希望

高天の家は代々家具職人で生計を立てており、高天自信もいつかは自分が家の仕事を継ぐものと考えていた。 「僕は綺麗で格好いい家具を作るんだ!」 義光の家は祖父の代から船乗りで、義光もまた将来は船乗りを目指していた。 「俺は父ちゃんやじいちゃんのような、立派な船乗りになるんだ!」 そして…学生になると専攻も互いに変わっていき、いつの間に疎遠になり夢が破れて社会人になった頃、それぞれが別々の民間軍事会社に入り全くの音信不通となっていった。 大典の刃我の装備は潜水夫のそれで、耐水圧は高いが鈍重で武装のみ充実し、大型魚雷まで背部に装備でき重爆装の機人となった。 万里の撃皇は耐水圧シーリング加工と背部のハイドロジェット、両前腕部に近接戦闘用の超高度合金の鉤爪を装備し、脚部には高機動に対応できるフィンを取付けていた。 義光の覇武羅は背部にマントの様な、多連装ハイドロジェットを装備して高機動を誇り、両脚に大型のフィン、前腕には近接戦闘用の回転槍を装備していた。 そして、覇武羅の両脇に備わる海竜はそれぞれ後部に大型ハイドロジェットを装備し、先端部に近接戦闘用の回転槍を構え、船体部には高機動フィンを装備して内部には各サイズの魚雷が十数発内蔵されていた。 「見つけました!700メートル下方より約10ノットで上昇してきます!」煉獄に装備されていた高機能ソナーのおかげで高天は先に発見出来た。 「散開!俺の魚雷で頭を止める!」大典はそう言うと背部の大型魚雷一基を敵の頭上めがけて射出した。 「気付かれた?…まあいい…行け!海竜!」義光の指示が走ると二機の海竜は船体をうねらせる如く回転しながら、解き放たれた獰猛な肉食魚のように敵に向かって行った。 「下方より二機急速接近!」高天はソナーを冷静に確認しながら報告した。 「チッ!起爆する!」大典はそう言うと迫る二機の頭を取るために魚雷を起爆させた。 爆発の圧力で各機人と海竜の動きが止まり、またソナーによる感知戦に移行した。 ハイドロジェットを止め、人魚の様に機人をうねらせて進む撃皇は、先に黒い塊の海竜の一基を発見し、静かに接近すると両前腕の超高度合金の鉤爪を叩き込んだ。 すると、悲鳴にも似た断末魔と共に内部圧壊し海の底へと消えて行った。 「殺られたか…」海竜の反応が一つ消えたので、義光はすぐに理解出来た。
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