第10章 海嶺に散る

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第10章 海嶺に散る

覇武羅は脚部に装備されていた大型のフィンで優雅に進んで行くと、前方にゆっくりと沈んで行く煉獄の背中が見えてきた。 大典はもう一基の海竜に発見され苦戦していた。ハイドロジェットを全開にしても潜水夫の鈍重な刃我は思うように回避が出来ず、海竜の魚雷を避けきれずに左腕を失っていた。圧壊を防ぐため左腕を切り離して事なきを得て、 背部の大型魚雷一基を射出し、誘爆覚悟で近接で起爆させた。 海竜を倒した撃皇はソナーで刃我のハイドロジェットを感知すると、正に水を得た魚のようにハイドロジェットを吹かして刃我の方角へ向かって行った。 「殺られるっ!!」覇武羅に背後を盗られた煉獄は背部のハイドロジェットを破壊され、高天は咄嗟にハイドロジェットを切り離し圧壊を免れると、沈む煉獄の勢いのまま両脚部フィンで全力で逃走した。 「逃がすかよ!」義光は覇武羅の多連装ハイドロジェットの高機動でまた煉獄の背後へ回り込むと、両前腕の回転槍を撃ち込もうと構えた。 大型魚雷の爆発の圧力で刃我の両脚を失う事になったが、海竜のハイドロジェットを破壊でき動きが止まった。しかし、海竜はうねる様に船体のフィンで方向を刃我に向けると、ありったけの魚雷発射口が開き大典を狙った。 「グゴン!!」鈍い轟音と共に海竜はひしゃげていき、その背後から撃皇が姿を顕した。 「助かったよ…」大典は心の底から声を出した。 「うわあああっ!!」高天は両脚のフィンを捻るように回転させると、煉獄を急速反転させて覇武羅と向かい合わせると煉獄の両腕で覇武羅の回転槍を挟み込み、両腕の多弾頭誘導ミサイル魚雷を発射した。 発射したミサイル魚雷は反転して多弾頭に分離すると覇武羅の背後から襲いかかり、高天に掴まれた両腕以外が破壊されていき、 覇武羅の頭部が破壊されて機人使いが放り出された瞬間、煉獄のソナーが敵機人使いのデータを高天に見せた… 「なんで?…どうして?…義光がここにいるの?…」高天は子供の様に疑問を声に出すと、圧壊していく機人使いを見つめていた… 「なあ、高天!俺の船が出来たら、お前の作った家具を世界中に運んでやるよ!!」 大型輸送船の後部甲板で高天は義光の声を思い出していた。 自然と涙が溢れたが、涙は拭かなかった。 「僕らは、ここでいったい何をしているんだろうね…」高天は揺れる波が黒く染まる海を眺めながら義光に尋ねた…
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