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「いいからまず、その薄汚い手を勇者様から離せ! そして、土下座して謝れ!」
「まあまあ、そう怒るなって、テオ。俺は―――」
「うるさい! いいからあやまっ―――」
―――パシンッ!!
と、顔に突然衝撃が走るまで声を荒げてしまっていた。
「……へっ?」
突然の出来事に、俺は一瞬何が起きたのか分からずにいた。僅かに右の頬が熱を帯びて痛いが―――って、目の前に勇者様がッ!?
「テオ様! 御父上に対して何たる口の利き方ですか! 私、思わず殴ってしまったじゃないですか!」
つい先程まで数メートル先にいたはずの勇者様はそう言って、物凄い剣幕で俺に怒鳴って来た。荒々しい息が鼻先にかかるほどの距離で。
よく見ると、いつの間にか手を振り払われてしまったことに驚いた顔をした父が彼女の後ろの方に見えた。
そこで俺はようやく何が起こったのかに気付いた。このたった一瞬で、4つの目が捕らえられないほどの速さで俺は―――この子に右の頬をぶたれたのだと。
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